イーサリアム財団助成プログラムの大改革：戦略的レースに焦点を当て、メンター制度で創業者を支援

作者：Zen、PANews

イーサリアムエコシステムプロジェクトにとって、基金会からの資金援助は間違いなくプロジェクトの肯定と後押しを意味します。2018年にイーサリアム基金会（EF）の支援プログラムを開始して以来、EFは「エコシステム支援計画（ESP）」などの仕組みを通じて、イーサリアムエコシステムのオープンソースプロジェクト、教育プロジェクト、開発者ツールなどの公共財に資金を提供してきました。

初期の支援モデルは、オープン応募型の助成金プログラムを中心に、開発者ツール、コアインフラ、研究、コミュニティ構築、オープンスタンダードなどの分野に焦点を当てていました。この段階では、EFはオープンな資金提供を通じて多くの成果を上げており、支援したプロジェクトは累計で数百にのぼります。2024年だけでも、ESPはオープン申請プラットフォームを通じて105のプロジェクトや計画に約300万ドルの資金を提供しました。この取り組みは、イーサリアムの重要なコンポーネントの開発を加速させるとともに、世界中のイーサリアム開発者コミュニティを育成・拡大させました。この資金の流れと人材の流入が、イーサリアムエコシステムの繁栄を促進しています。

しかし、エコシステムの拡大に伴い、この受動的な申請待ち型の支援モデルには限界も露呈しました。EFの支援チームは人手が限られており、エコシステムのニーズは多岐にわたるため、急増する申請数に完全に対応しきれませんでした。これにより、EFの時間、エネルギー、リソースの大部分が消耗され、戦略的な機会を追求する能力が制約される事態となっています。

イーサリアムエコシステムの規模と複雑さが増す中で、支援の方法も時代に合わせて進化させる必要があります。そのため、EFは公共財の支援を続けつつ、より戦略的かつ積極的にリソース配分を計画する方針を模索し始めました。

ESPの変革：願望リスト＋提案募集の二軸ドライブ

2025年に向けて、これらの課題を背景に、イーサリアム基金会は資金支援戦略に大きな調整を行いました。2025年8月末、EFはエコシステム支援計画（ESP）が一時的に公開資金申請を停止し、資金優先順位の再評価と支援方式の改善を行うと発表しました。

この調整は、受動的な応答モデルからより積極的な戦略的アプローチへとシフトし、イーサリアムエコシステムの重点分野をより密接に支援することを目的としています。また、EF内部の各チームの戦略とも連携させる形です。簡単に言えば、資源をエコシステムにとって最も重要で影響力の大きいプロジェクトに投入することを目指しています。

数ヶ月の準備期間を経て、2025年11月3日にEFは新しい資金支援メカニズムを正式に発表しました。中心は、「願望リスト（Wishlist）」と「提案募集（RFP）」の二つの方法を用いて、完全なオープン申請を置き換えることです。新しいモデルでは、資金申請は引き続き誰でも可能ですが、申請はEFが事前に列挙した重点分野や明確な課題に対応している必要があります。具体的には：

願望リストは、イーサリアムエコシステム内の重要な空白や機会の分野を示しますが、具体的な実現方法には限定しません。EFのチームはエコシステムの現状を観察し、優先度の高い広義の方向性や目標を提案します。これはEFのエコシステムに対する「願い」や指針のようなもので、多くの自由度を持ち、申請者はこれらの優先ニーズを満たすために創造力を発揮し、独自のアイデアや方案を提案できます。EFが重視するのは、申請されたプロジェクトがこれらの大きな方向性と整合し、エコシステムに積極的な影響をもたらすかどうかです。

一方、提案募集（RFP）モデルはより具体的でターゲットを絞ったものです。EFは明確な課題や機会の記述を公開し、申請者に対してその課題に対する解決策を提出させます。この方式は、すでにEFが認識している緊急性の高い問題や、特定の分野への投入が必要な場合に適しています。各RFPには、あらかじめ定められたプロジェクト範囲、要件、期待成果が含まれ、申請期間やプロジェクト期間も固定されます。まるでEFが「出題」し、申請チームが「解答」を提出する形です。特定のニーズを満たし、期限内に成果を出せる提案だけが選ばれます。

新たなWishlistとRFPリストは、暗号学、プライバシー、アプリケーション層、セキュリティ、コミュニティ拡大などの重要分野をカバーし、これらの分野はイーサリアムの現状の課題と機会を象徴しています。

創業者ラボ：実行力を核とした創業者支援プログラム

資金支援の仕組みが戦略的な計画へとシフトする中、2025年にEFは新たな取り組みとして、「Founders Lab」を開始しました。これは、イーサリアムエコシステムのスタートアップ創業者を対象としたメンター制度を伴う加速プログラムです。その核心は、優れたアイデアを実現するには強力な実行力とリソース統合能力が必要だという考え方にあります。

2025年11月17日～22日にアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されるDevconnect Argentinaは、公式にこれを「イーサリアムワールドフェア（Ethereum World’s Fair）」として位置付けています。この期間中、Founders Labは11月18日～19日に初めて公開され、選抜されたイーサリアムスタートアップチームに対して1対1の指導を提供します。

最初のメンターには、CoinbaseのL2ネットワークBase責任者Jesse Pollakや、Polygonの共同創業者Sandeep Nailwalなどの著名な起業家が名を連ねています。Founders Labに参加するチームは、これらの「ユニコーン」メンターに直接相談でき、戦略、技術、運営の面で遠回りを避けることが可能です。

EF公式の紹介とメンターの背景によると、Founders Labの指導内容は主に以下のテーマに焦点を当てています：

• GTM（Go-To-Market、市場進出戦略）：Founders Labは、製品のポジショニングや市場戦略の整理を支援し、ターゲットユーザーの明確化、プロモーション計画の策定、競争優位性の構築などを重視します。
• 資金調達（Fundraising）：成功した資金調達と大規模プロジェクトの運営経験を持つ起業家がメンターとして参加しており、ビジネスプランの磨き方、投資家との交渉、資金調達のタイミングと条件などの貴重なアドバイスを提供します。
• 製品とスケーリング（Product and Scaling）：メンター制度を通じて、製品のブラッシュアップ、ユーザー体験の最適化、ユーザーベースの拡大、技術の拡張方法を伝授します。
• ネットワークリソースと業界洞察：「人脈は資源」とも言われ、適切なパートナーやコミュニティリソースにアクセスできるかどうかが、プロジェクトの成功を左右します。Founders LabはEFの広範なエコシステムネットワークを活用し、新人創業者の橋渡しを行います。メンターは経験を提供するだけでなく、自身の人脈を通じて潜在的なパートナーやユーザーコミュニティ、投資機関とのコネクションも支援します。

これらの支援を通じて、Founders Labは従来のEFの支援モデルの短所を補います。以前は資金提供や展示の場を提供することが中心でしたが、今では方法論の伝授やネットワーク拡大、結果に焦点を当てることに進化しています。この変化は、EFが創業者の実行力自体を「公共財」として投資すべき価値のある資源と見なすようになったことを示しています。EFは新しい資金支援計画の発表においても、資金だけでなく、受益者に対して一貫した強力なサポートを提供することを強調しています。